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“転機”をチャンスに - 駐妻のキャリアを研究して分かったこと- 駐妻キャリア研究家 中原美由己

皆さんこんにちは。駐妻キャリア研究家の中原美由己です。

 私が初めて「駐妻」になったのは、21年前。
現在は3度目の駐妻生活をアメリカ(アリゾナ州)で過ごしています。

最初の海外帯同先は、ロシア(モスクワ)でした。当時、私が抱えていた「キャリアの断絶」の悩みを相談したり打ち明けたりする仲間というのは、現地で出会う駐妻たち、会社の同僚で同じように夫の海外赴任に伴い退職した駐妻たち、会社の元上司などに限られていました。

駐妻をテーマに研究しようと思ったきっかけとは?

・帯同期間中、帰国後の仕事に対する不安が払拭できなかったこと

・帯同期間中に語学習得や習い事をするが、自分自身で目標を立て、自分でモチベーションを上げることがどれほど大変なことなのか実感したこと

・駐在員(海外派遣勤務者本人)よりも駐妻のほうが現地の生活と密接にかかわることが多いように感じたため、異文化に触れる機会も多いのではないかと思ったこと

 

モスクワに滞在していた時に感じていた、これら自らの経験や考えだけではなく、“駐妻”とは、どのような人たちの集まりで、どのような事を考えて海外生活を送っているのか、また、駐妻のキャリア意識や語学力は、どの程度のものなのだろうか等、「駐妻の全体像」を把握することが、自分自身の考えをまとめ、駐妻の存在を社会に対してアピールすることができるのではないかと思い、駐妻をテーマとして研究をスタートしました。

 

そして、「自らの経験や考え(主観的な意見)を、客観的なデータに基づいて、駐妻を社会へアピールする一つの方法」として、2011年に国際ビジネス研究学会で、論文「海外帯同配偶者の異文化適応能力についての一考察~グローバル人材としての潜在可能性に関する研究~」を発表しました

 

論文の目的

 

論文の目的

 

論文の結論:
『駐妻は、「グローバル人材」として活躍できる可能性が十分にある』


日本企業が、駐妻を「グローバル人材」として活かすために必要なこと

  1. 駐妻の存在を認知する
  2. 駐妻の中には、異文化適応能力と語学能力を併せ持つ人がいることを知る
  3. 駐妻が十分に能力を発揮し、活躍できるような仕組みや環境を整え、その人たちを使いこなす

 

「グローバル人材」として活躍できる駐妻を増やすために必要なこと

  1. 海外派遣企業からのサポート
  2. 駐妻自身のモチベーションアップ

 

これらのどちらもが重要であり必要、と論文で述べています。

 

 

駐妻が海外帯同に対して前向きに考え、海外で生き生きとした生活を送ることは、駐在員の精神的な安定をもたらし、より一層仕事に集中でき、海外での仕事がよりスムーズにいくはずである、さらには、駐妻をグローバル人材として活かすことも企業にとって大いにメリットがあり、日本企業のグローバル化にも貢献できる可能性が十分にある、ということが論文で一番伝えたかったポイントです。

 

論文は以下のリンクから閲覧可能です。ご一読いただけたら嬉しく思います。

海外帯同配偶者の異文化適応能力についての一考察 ―グローバル人材としての潜在可能性に関する研究―」『国際ビジネス研究』


*英語能力のブラッシュアップを兼ねて、論文の英訳版も作成しました。
[An Inquiry into Intercultural Adaptability of Expatriates Spouses = Study for Their Potential as “ Global-Jinzai” (or Global Human Resources) =]

 

本の出版 ~駐妻のモチベーションアップを目指して~

『心理学者のフレデリック・ハーツバーグによると、人間の欲求には、「衛生(維持)要因」と「意欲(動機)要因」の二要因があるとしている。「衛生(維持)要因」は「不満足要因」とも表現され、また、「意欲(動機)要因」は「満足要因」とも表現されている。これらは相互に無関係であるため、不満足な要因を解消したとしても積極的に満足をもたらすものではない。すなわち、不安要素を取り除くだけではなく、「意欲(動機)要因」を刺激することにより、モチベーションが向上する、とされている 。』(ハーシィ,P.・K.H.ブランチャード・D.E.ジョンソン(山本成二・山本あずさ訳)(2000)『行動科学の展開-人的資源の活用-』pp.76-79)

 

不安の中には、言葉の問題や現地での日本人コミュニティへの順応、生活習慣への戸惑いといったある程度の「時間を経る」ことで解決していけるものもある一方、子供の教育や帰国後の就労といった、現地での生活では解決が難しいものもあります。しかし、駐妻の帰国後の就労に対する不安は、どのように海外で過ごせば日本帰国後に海外経験が活かせるのか、どのようなところで活かせる場があるのか、といった目標となるようなものがあれば、海外での過ごし方も変わり、不安を取り除くだけでないモチベーションアップの効果も期待できます。

 

海外で暮らすことは、自分のキャリア(仕事だけではなく、人生においても)を高めるきっかけにつながります。駐在員にただ帯同した、というのではなく、与えられた海外生活を積極的に大いに活用し、語学や文化的なことを身につけ、異文化の中に積極的に飛び込み、自立した自分になることが自分自身の成長や自信にもつながります

“駐妻にとって海外生活を楽しく、有意義に過ごせる手助けに少しでもなれば、そして、駐妻のモチベーションアップのきっかけになれば”、との想いを込めて、『夫の海外赴任を「自分ごと」にする:グローバル駐在妻の選択―“転機”をチャンスに-』(デザインエッグ社)を2018年に発刊しました。(Amazonよりご購入いただけます。Kindle版有り)

 

読者の方々からの感想をお聞きするたびに、思い切って出版してよかったと思います。

 

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駐妻キャリアnet との出会い ~時代の変化を感じる~

 

大学院で駐妻をテーマに研究していたころ、以下のような調査結果が目に留まりました。

 

「帰国後にすぐにでも仕事をしたい」・「まあまあ仕事をしたい」と回答した駐妻の内、約半数の人が、帰国後の就労実現のための準備は何もやっていない。(労働政策研究・研修機構が2006年10月に実施した調査結果による)

 

駐妻キャリアnetの会員になったのは、今回のアメリカ帯同の2カ月前、2017年10月でした。キャリアに関心のある世界中の駐妻と繋がることができる駐妻キャリアnetの存在は、私にとって大きな気づきとなりました。

過去2度の海外帯同時までは、身近な駐妻(本当に会って話をしたことのある駐妻)しかほとんど出会うことがなかった時代から、世界中に広がる駐妻と意見交換ができる場ができたなんて、と感動さえ覚えました。

「駐妻のキャリア」の話題に対して“打って響く”世界中に点在する駐妻たちに出会えたことは、本当に時代の変化を感じました。遠く離れた国々に滞在するほかの駐妻たちと話をしてみると、駐妻の根本的な悩みは、私が最初に駐妻となった21年前と大きく変わっていませんでしたが、キャリアのことを真剣に考え、行動し始めている駐妻たちが増えていることを実感しました。

駐妻キャリアnetの会員同士がコミュニケーションを取り、相互に刺激しあえる場がある、キャリアに関する様々な情報を得ることができる、様々な活動を通じて、キャリアを共に考える場がある、駐妻同士が共に成長するコミュニティができたことは、駐妻同士のモチベーションキープにも繋がるでしょう。

 

学会で発表した論文の元になったのが、立命館大学大学院経営管理研究科在籍中に執筆した修士論文でした。その修士論文の口頭試問(修士論文に対する教授陣との面接)で、主査の教授から、以下のようなコメントを頂いていました。

「ネット上でコミュニティを立ち上げるなどして、自分が中心になって動くべし」

「そのネットワークで“私たちこんなことが出来ます“と企業に企画をぶつけるくらいの活動をすべし」

現在、駐妻キャリアnetのスペシャリストとして、コミュニティ運営をサポートしています。大学院で駐妻をテーマに研究してきたことを、実際の活動に結び付けていける喜びを日々感じながら過ごしています。

 

長文になりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

Collaborators

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